もう何十年も前に忍野八海を訪れたことがある。かつて、清浄な水がこぽこぽと湧きでる様子や、霊峰富士を望む素朴でのどかな田舎の風景に魅かれ、通り道だからと、ひさしぶりに寄ってみることにした。
ところが、私の頭の中の清浄なその地は、団体客が押し寄せるにぎやかな観光地と様変わりし、雑然とした空気に包まれていた。おまけに路線バスで行ったのだけれども、行きはたまたまめぐりあわせがよくて、とんとん拍子にたどり着いたのが、帰りに停留所で時刻表を見ると、バスがちょうど出たばかりで後1時間半も待たなければならない。がっかりでした。
でもまあ、そのおかげで、バス停で東京から来たという3人組のかわいい女の子とおしゃべりできたので、よしとしましょう。(昼食を取って時間をつぶし、再びバス停に戻ると、その女の子たちもバスを待っていたのだった。)
「高校生?春休みなの?」
と聞いたら、顔を見合わせ、ふふふ、と笑って
「社会人です。ひとまわりも若く見られちゃった。」
とうれしそうだった。でも、3人ともお化粧気がなくて、自然な感じで、ほんと高校生みたいに見えたんですよ。
そのあと、富士吉田駅から御殿場へ。これも路線バスを利用。途中、山中湖あたりを通るので、週末遊びにやってきた観光客が、この路線を頻繁に乘り降りしていた。そして、富士吉田から山中湖あたりを走る間に、バスを乘り間違えて、途中で困惑しながら运転手に尋ねる外国人が、2組もいた。
一組目は河口湖駅からやってきたバスが富士吉田駅に停車したとき。つまり私が乘り込んだ駅でのこと。外見からしてインド人風の家族連れ、子どもやおばあさんを含んだ総勢6人の一行。そのうちのお父さんが、なにやら紙を运転手に見せているけれど、运転手はただ「ノー」とひとこと言ったきりで、次の言葉が出てこない。バスを乘り間違えたらしいけど、どうするんだろう?と思っていたら、运転手が無線で連絡、制服を来た男性がどこからかやってきて、一行を降ろし、身振り手振りで導いていった。
もう一組は西洋人二人と東洋系の外国人一人の男性グループで、学生風の若者たち。どこから乘車したのか、私は気が付かなかった。山中湖の湖岸あたりで、一人が运転席までやってきて、なにやら話しかけ、「マウント・フジ」と繰り返す。富士山に行きたいってことかなぁ?でも、富士山ったって、そこに見える山全部が富士山なんだけど…。运転手はさっきと同様に、「ノー」と言ったきり、無表情に黙り込む。その間も次々と停留所を過ぎていく。心配していたら、山中湖のバスターミナルに着いた。そこで、运転手はエンジンを止め、自らバスを降りて三人を少し離れたターミナルの建物まで連れていった。
日本もたいがい英語の通じない国だよなぁ、と思う。
河口湖駅にて
忍野八海へ向かうバスの車中より
忍野八海
富士吉田駅(富士山駅)ビル屋上より