今年は庭にトノサマガエルが現れない。やっぱり池に網をしたのが悪いのだろうか。一応、隅の方にカエルが通れるくらいの穴が開いてはいるのだけれども。
その代わりというわけではないけれど、先週旅行に行った時、大量のアマガエルに出会った。
八ヶ岳の山麓、山梨県北杜市に日本名水百選のひとつである「三分一湧水」という湧き水がある。
水争いが激しい頃、農業用水を3つの村に均等に分配させるため、湧出口の水枡に三角石を築き、三方向に流水を分岐させたという伝説があるそうだ。一日に約8500トンもの豊かな湧出量を保つ。(
http://www.alps-hs.co.jp/sanbuichi/info.htmlより)
水が湧き出ている場所というだけで、子どもには何のおもしろみもないだろうけれど、大人たちは少しでも涼しげなところがいいし他へ行く道すがらでもあったので、朝ホテルを出た後に寄ってみた。ただちょっと寄るだけのつもりだったのである。
午前中の早い時間だったので、駐車場もすいていたし、人も多くない。ちょっとした林の中に小さな泉があって、こんこんと水が湧き出ている。水から立ち上る空気が涼しい。足をつけてみると、この夏の暑さなのに、とても長くつけてられないほどの身を切るような冷たさ。気持ちがいい。マイナスイオンが溢れているような気がする。夏はやっぱりこういう場所に来るのが一番だ、などと思っていたら、突然母の皆を呼ぶ声。
「ほら、見て見て。カエル、カエル。」
駆け寄って母の立つ場所に足を踏み入れると、小指の先ほどの小さなアマガエルの子がたくさん、くもの子を散らすように四方八方に、跳びはねた。
5人の子どもたちは目を輝かせて、カエルを追い始めた。
それからしばらくは、カエルを捕まえては両手の中に大事に持って歩いたり、少し頭を出させて眺めたり、冷たい水につけたり、逃げられてはまた捕まえたり、その間大人たちはベンチでおしゃべり、思いのほか楽しい場所となった。
そばで5歳くらいのよその男の子がじっと見ていたので、ほら、そこにいるよ、と教えてあげたけれど、こわごわと手を差し出して後ろから追いかけるので、ちっとも捕まえられない。あきらめて向こうへ行ってしまったので、私が捕まえて持っていってあげた。
「いる?」
と聞くが、首を振って後ずさりする。そばにいた同じ年くらいの女の子にも差し出して、
「さわってみる?」
と聞いてみた。この子も黙って、しかしきっぱりと首を振った。ところが、妹だろうか、隣にくっついていた小さな女の子が、何も言わずに自分の人差し指を、私の手の中にあるカエルに向かって差し出してきた。好奇心に溢れた目だ。全然怖がっていない。お姉ちゃんは妹を止めようとする仕草を見せる。お、ちっちゃい子の方が勇気あるな、と思いながら、手を大きく開けた途端、カエルはぴょんと跳んで逃げてしまった。
カエルにとっては、子どもたちにいじられ倒され、果ては急流に流されるのもいるはで、大災難だったろう。
段差の小さな滝の手前にあるのが三角石。