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漢詩の表現する世界、その奥深さに心惹かれ、時々ちゃんと勉強してみようと昔漢文の授業で買わされた参考書などを本棚から引っ張り出してページを繰ってみるのだけれど、最後まで読みとおしたことがない。
『李白~詩と心象』松浦友久著(社会思想社・教養文庫)。一年程前、たまたま通りがかった古本屋で、店頭の100円コーナーに並べられていたものを買った。しかし第一章を読み終えたところでやっぱり挫折してしまった。
白文のままでは難しすぎて読むことができない。かといって読み下し文の日本語としてのぎこちなさにどうしても違和感を感じる。解説で意味を理解しても、味気なくて詩を味わったことにはならない。
結局読みとおせなかったこの本を、当時衝動的に買ったのはなぜだろうと、再び開いてみてわかった。冒頭の「序にかえて」に『静夜思』という詩が掲げられていて、その日本語訳がすばらしかったのだ。読み下し文でも解説でもない、日本語に訳された詩である。
抜粋する。上から白文(原文)、読み下し文(訓読)、松浦氏の日本語訳。日本語訳が付してあったのはこの冒頭の詩だけであった。
『静夜思』 李白
牀前看月光
疑是地上霜
挙頭望山月
低頭思故郷
牀前(しょうぜん) 月光を看(み)る
疑(うたご)うらくは是(こ)れ地上の霜かと
頭(こうべ)を挙げて 山月を望み
頭(こうべ)を低(た)れて 故郷を思う
枕辺(まくらべ)に月かげあふれ
きらめくは地上の霜か仰(あお)ぎみる山の端(は)の月
俯(ふ)し思う遠き日のうた