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2011 (140)
覗いてはならぬという淵の傍らに立つ
淵は暗く深く静まりかえり一見、何ものをも映さない
緑の木立は密やかにざわめき胸騒ぎの鳥声が警告を伝える
何のために、禁を犯そうとするのかそこに淵があるから、などと詮もないことを考える
淵を覗けば、おそらく浮き上がる淵の底から、沈むボディが現れる
青ざめた白い肌水にたゆたう黑い髪
踝に絡みつく緑の裳裾
彼女は待っていた彼女の目を見つめかえす目を
浮かび上がるときを
彼女の手に差しだされる手を
引き上げられるときを
予感に怯えた私は身を翻し、淵を後にする一陣の風が吹き抜け、獣たちは安堵の声をあげる
取り残された彼女の深い溜め息が木々の間を縫い
低く長く尾を引きながら
私を追いかけてくる