2008 (142)
2009 (130)
2010 (94)
2011 (140)
両手があんまり彼の頬に触れたがるので
頭は困惑した
両手はどうしても触れたくて
手に手をとって逃げ出した
両足があんまり彼の元へ行きたがるので頭は苛立った
両足はどうしても行きたくて
砂煙たてて駆けて行った
腹の虫があんまりぐうぐう文句を言うので頭はうるさいと怒鳴った
腹はぺこぺこの腹を抱え
空腹を満たす旅に出た
後に残ったのは頭がひとつ
見上げれば夕焼けの空山の端が濃紺に縁取られていく
耳を澄ませば虫の音
夜の帳が下り始める
冷たい夜露が頬を伝う頭は無上の喜びを感じ
そっとまぶたを閉じた
(続く)