中国企業はテクノロジーの多くの分野で世界的なプレゼンスを拡大している。しかし、消費者向け製品の分野では、依然として大きな難題に直面している。それは、高い価格を正当化できるような、かっこよくて望ましいブランドイメージをどのようにして作り出すのかという課題だ。
世界的なブランドの構築には時間や資金のほか、多くのものを要する。ブランドコンサルティング会社の英インターブランドが発表した「ベスト・グローバル・ブランド2013」の上位100社に、中国企業は一社もランクインしなかった。トップはアップルで、これにグーグル、コカ・コーラ、IBM、マイクロソフトと続いた。
テクノロジーアナリストは、中国企業の中で最もグローバルブランドになる可能性が高いのは、パソコンメーカーのレノボ・グループだと述べている。サンフォード・バーンスタインのアナリスト、アルベルト・モエル氏は、「中国の消費者向けブランドで、レノボほど世界的に成功している企業はほかに思いつかない」と話す。
歴史が参考になるとすると、レノボの課題は日本のソニーや韓国のサムスン電子が過去数十年の間に直面、克服したものと似ている。ソニーとサムスン電子はともにインターブランドのリストの上位100社に入っている。
レノボの世界進出は、2005年に赤字だったIBMのパソコン事業を買収したことで始まった。当時はこの決断を疑問視する向きが少なくなかった。昨年9月までの10年間、レノボのブランドコンサルタントを務めていた広告代理店フロンテッジの岡崎茂生執行役員は、2005年当時レノボの負けいくさのように見えたと指摘。岡崎氏によれば、中国製品=低品質と考えていた消費者は少なくなく、レノボがIBMの「Think Pad」ブランドの価値を崩壊させかねないとの懸念があった。
岡崎氏によれば、レノボの成功は、楊元慶最高経営責任者(CEO)のIBMから学ぼうとする姿勢によるところが大きいという。楊氏はIBMの元幹部や元マネジャーを中国式のやり方に適応させるのではなく、買収後、英語をレノボの公用語にして、家族とノースカロライナ州に移り、IBMのチームと緊密に連携する道を選んだ。
楊氏はインタビューで、「われわれが買収を発表したとき、ヘビがゾウを飲み込むようなものだと指摘する向きがあった。われわれが純粋な中国企業だったからだ」と述べた。
同氏は現在では、レノボが中国企業だと考えていないという。レノボはドイツ、日本、それにブラジルでの買収を経て、昨年出荷台数で米ヒューレット・パッカード(HP)を抜き、世界一のパソコンメーカーになった。レノボの上級幹部12人のうち5人は欧米出身だ。
レノボは最近著名人を起用した国際的なマーケティング活動を行っているものの、同社の前には依然として、グローバルブランドとしての認知という点で長い道のりがあるのは確かだ。
前出の岡崎氏は、ソニーやトヨタといった日本企業がグローバルブランドになるまでに数十年かかったが、レノボが10年もかからないうちにここまで上り詰めたことはとても印象的だと話している。