-中国大使を引き受けた理由は。
世界は1極から多極の時代に移りつつある。今までのように一つの国の専門家が外交をやればいいという時代は終わった。あらゆる面で(諸外国と)接点を持ち、今までのしがらみがない人を採用するのも一つの方法で、米国と中国に接点を持つ私が指名されたのだろうと思う。この年だから思い悩んだが、限りある余命を国にささげようと決断した。
最近、日本の政治力が低下している。リーダー(首相)が代わりすぎる。民間でも官でも、どの世界でも信頼(関係構築)には時間がかかる。1年や数カ月で代わってどうして信頼が得られるのか。菅直人首相に対しては、足を引っ張り合うのではなく、みんなでもり立てて、日本国としての信頼を得るようにしてほしい。
-東シナ海ガス田共同開発への取り組みは。中国の軍備拡張をどう考えているか。
ガス田の問題では、27日に(条約締結に向けた)局長級の協議を開く。両国のトップが合意したことが進んでいる。それがアジアの平和と安定につながる。中国の軍事力強化では、できるだけ透明度を高めてもらうことを日本として要望していく必要がある。世界の平和と安定のため、中国が大国としての言動の重みを自覚しながら行動していくと期待している。
-中国とはどういうかかわりを持ってきたか。
各地方の省長や書記は多数存じている。中国のプロジェクトにもっと日本が協力できると思う。経済界の方に(在北京の)日本大使館にどんどん来てもらい、中国の経済関係の人を呼んで一緒に話をしてもらう。そういう接点を広げていく。
スポーツや文化の交流など、日中の国民が互いに理解を深める接点も必要だ。中国の歴史教科書を読んでいると「これはまずい」と(感じる)。南京の虐殺とかいろんなことが書いてある。(中国人が)嫌日になってはいけない。私は大使として今まで以上に中国の各地を歩き、日本というのはいい人間が多いということを広めたい。草の根の支持がないと、外交はうまくいかない。
-首相の靖国神社参拝をどう考えるか。
個人の宗教観とか信条の問題は、政府がこうしろ、ああしろと言う問題ではない。とやかく私が申し上げることはない。
-日本の自由貿易協定(FTA)への取り組みが中韓に比べ遅れているが。
個人的見解だが、できるだけ早急に日中のFTA協議に入るべきだ。日中FTAを進めないと日本は沈没する。(2010/07/23-16:29)