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進む端末販売収支の改善―携帯電話事業大手3社の上半期決算―

(2008-11-20 19:09:07) 下一个
NTT、KDDI及びソフトバンクの通信大手3社の08年度第上半期(4~9月)の決算が出揃った。景気後退が取り沙汰される中で、携帯電話事業の決算はNTTドコモが減収大幅増益、KDDIが増収増益、ソフトバンクが減収減益と、一見バラバラに見える内容だった。しかし、08年度上半期決算の最大のポイントは、懸案だった携帯電話端末の販売収支の改善が大きく前進したことにある。NTTとKDDIでは、連結営業利益に占める携帯電話事業のウエイトが年々高まり、モバイル事業依存が鮮明になりつつある一方で、固定通信事業の収益性回復に苦慮している。ソフトバンクはモバイル事業の利益率を抑えて、顧客ベースの拡大に注力している。以下に、通信大手3社の携帯電話事業の上半期決算を分析する。
■減収ドコモの大幅増益と独り勝ちソフトバンクの低利益率

移動通信事業大手3社の2008年度上半期決算の概要を示したのが(表1)である。期末の顧客数シェアを1.8ポイント減らし減収だったNTTドコモが、営業利益を前年同期に対し41.2%も伸ばし、売上高営業利益率も7.9ポイント改善し25.5%となった。これに対して、当期の顧客純増数の50%を獲得して独り勝ちし、期末顧客数シェアを0.9ポイントも高めたソフトバンクは、6.4%の減益となり売上高営業利益率も先行2社の半分程度の11.4%と低いレベルにとどまっている。KDDIは、当期の販売が振るわず契約数の純増が11万(シェア5.3%)と低迷したが、営業利益を5.3%増の2,879億円とし、売上高営業利益率を1.4ポイント改善し21.2%とした。

 ソフトバンクはサービス改善のために急ピッチで基地局の増設を進めただけでなく、ソフトバンク相互なら1時~21時まで通話料が無料になる「ホワイトプラン」を売り物に顧客獲得に努め、当面の利益確保よりは顧客ベースを増加させる戦略をとっている。そのことは、ソフトバンクのARPU(1加入1か月平均利用料金)が、NTTドコモやKDDIに対して3割近くも低いことからも分かる。NTTドコモやKDDIは、無料通話を原則として自社網内の家族間通話に限っている。だから、ソフトバンクの低利益率は、現時点では想定内ということだろう。

 注目すべきは、顧客数シェアを減らし減収だったNTTドコモが、41.2%もの営業増益を達成したことである。結論からいえば、「バリュープラン」などの導入による通信料の実質値下げによって移動通信サービスの収支は悪化したが、従来大幅赤字だった携帯電話端末の販売収支がそれを上回って改善された。以下に説明するように、端末販売価格の引き上げ、および端末販売数の減少(前年同期に対し19.8%減)による「販売奨励金」の削減などによって、当期の端末販売収支の改善は、総額で2,859億円もの規模に達し、大幅増益が実現した。

■NTTドコモ、端末販売収支を半期で3,450億円改善
 NTTドコモの2008年度上半期(4~9月)の売上高は、前年同期比2.5%減の2兆2,678億円にとどまったが、営業費用が11.8%減少して16,908億円となったため、営業利益は41.2%増の5,769億円となった。減収傾向が続く中で大幅増益を実現できたのは、それを上回る営業費用の削減による。

 08年度上半期の同社の決算で注目すべきは、携帯電話端末の販売に関する収支が大きく様変わりしたことだ。原価相当の端末機器を割賦で支払う「バリュープラン」の浸透などによって端末1台当たりの平均販売価格が前年同期比約2倍の3.1万円に増加した。このため、端末の総販売台数が前年同期比19.8%減の1,027万台にとどまり不振だったにもかかわらず、「端末機器販売」収入は63.9%増の3,192億円(前年同期の「端末機器販売」額に対し1,244億円の増収)となった。

 一方、「端末機器原価」は、端末の総販売台数の減少および端末1台当たり平均購入価が10.7%下がって4.0万円となったことにより、前年同期比28.8%減少して4,080億円(前年同期の端末機器原価に対し1,615億円の減少)となった。

 この結果、端末機器販売の直接収支(「端末販売」額-「端末機器原価」)は2,859億円の大幅改善となった。(表2)

■端末販売収支の改善で減収増益決算のKDDI
 KDDIの移動通信事業の08年度上半期における売上高は、前年同期比1.5%減の1兆3,607億円だった。一方、営業費用の減少率(-3.2%)が売上高の減少率を上回って、営業利益は5.3%増の2,879億円となり、減収増益となった。固定通信を含む営業利益の通期見通しに対する進捗率は59.3%で、同社は「順調に推移」しているとの認識を示している。

 当期の移動通信事業の売上高は、契約数が前年同期比4.2%増加したが、新料金プランの導入などによって音声ARPUが12.6%下がって3,730円となり、データARPUが3.8%増加して2,210円となったものの、総合ARPUは7.2%減少して5,940円となったため、同社の移動通信事業は1.5%の減収となった。

 一方、営業費用は前年同期比3.2%減の1兆727億円となった。同社の説明資料によると、4~6月期には4.5万円だった代理店に対する平均販売手数料単価が7~9月期には3.8万円に下がった(注1)こと、端末の総販売数が前年同期の761万から当期の556万へと205万(-26.9%)も減少したことが寄与したのではないかと考えられる。

■独り勝ちのソフトバンクが減収減益
 ソフトバンクの移動通信事業(連結売上高の62.5%を占めている)の08年上半期の売上高は前年同期比5.0%減の7,740億円、営業利益も6.4%減の882億円(連結営業利益の49.0%)だった。同社は9月まで契約数純増数連続17カ月トップを続けており、加入数を15.1%も伸ばした。データARPUを16.3%も伸ばして1,710円としたものの、音声ARPUが26.3%も減少して2,460円となり、総合ARPUは13.1%減少して4,170円となったため、5.0%の減収となった。また、端末機器の割賦販売の浸透によって、買替え(機種変更)が減少したため、付帯事業収入でも減収になったことなどが主な要因とみられる。

 営業利益は、前年同期に対し6.4%減少して882億円となった。端末機器調達費用と販売費用などが減少したものの、売上高の減少を埋めきれなかった。

 同社の説明によると、携帯端末は「音声マシン」から「インターネット・マシン」に進化する過程にあり、「インターネット・マシン」では外部から各種のアプリケーションを取り込み、旧いソフトを書き換えて利用できるようになるから、従来の「音声マシン」のように新サービスを利用するために数ヶ月ごとに買い替えるようなこともなくなるだろうという。端末の使用期間は長くなり、買い替え需要の減少が見込まれる。一方、高速データ通信に対する需要が強まり、優れたアプリケーションやコンテンツへの要望が高まる。

 08年度上半期における通信大手3社の携帯電話事業の決算は、端末販売収支の改善が本格的に動き出したことを示している。一方、ソフトバンクが「iフォーン3G」でアップルに支払っている「端末補助金」は1端末当たり300~400ドルとみられており、販売数が伸びれば負担になりかねない。これ程の「端末補助金」を支払っても採算の取れるビジネス・モデルを、ソフトバンクは見つけることができるのだろうか。不調がささやかれるiPhone 3Gについて、同社は販売数を公表しなかったが「販売台数は予定のペース。ARPUは一般の2倍近い。iPhoneはわれわれにとってもうかる端末だ。」(孫社長)と語った(注1)。

(注2)経営不安説は「勘違い」、ソフトバンクは最高益を更新(techon.nikkeibp.co.jp / 2008.10.23)

 ソフトバンクの08年度決算説明会は、当初予定から1週間前倒しで開かれ、「当社の経営を不安視する声に応えた。」(孫社長)のだという。ボーダフォン買収にともなって借入金依存度が高い(08年9月末の有利子負債約2兆5,000億円)同社が、金融危機の中で不安視され、株価も3か月前の半分以下と低迷している。こうした市場の不安を一掃するため、「創業以来最高の利益水準」である上半期の業績を示した上で、「勘違い」「フリーキャッシュフローが大きく改善。今後も強含み。」を強くアッピールした。

 ソフトバンクの08年度上半期決算は、ブロードバンド・インフラ事業、インターネット・カルチャー事業(主としてヤフー)、固定通信事業などが好調で、移動体通信事業の減収減益をリカバーして過去最高の連結営業利益1,800億円(前年同期比7.8%増)を計上している。他社に先駆けて端末の割賦販売を開始した移動体通信事業では、2年が経過して割賦販売期間が終了する顧客が出てくるが、これらの顧客には「通話料の特別割引(1,000~2,000円ほど)をせずに済む。これは来期の収益性を大きく高める。」(孫社長:前掲techno.nikkeibpの記事)と期待している。端末の買い替えサイクルも最近では30数か月に延びているし、2年経過したからという理由だけで「ただとも」から抜けにくいという事情もある。今は利益率を抑えて、ひたすら顧客ベースの拡大に注力し、将来に備えるのがソフトバンク流なのだろう。
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