思慕
両手を合はして両手を見れば
さみしい靜物のやうな氣分である
遠く離れた人の心が
まろく納められたやうな圓空である
だからといつてひくい聲で
「我が船ハバナを立つとき」をうたへば
いやにしめつぽい春の宵である
部屋の中で男が一人女が一人
互にだまつて向ひ合つてるやうな感じである
窓にちらほら白う見える
あの頃の梅の蕾である
あの頃あの娘に
「我が船ハバナを立つとき」で送られてからといふものは
引きつゞいて愛別の思念が
二月の光りのやうに白く輝いてゐるのである
思慕
双手合十,凝视双手
就仿佛在端详某个寂寞的静物
离散者的心
就宛如一个被收拾得浑圆的空洞
即便如此,一旦用嘶哑的嗓音
唱起“当我们的船驶离哈瓦那时”,
就顿觉这是个潮润得讨厌的春宵
房间里有一男一女
似乎正沉默着,面面相觑
窗前有白色的星点隐约闪现
原来是那时的梅花结出的苞蕾
自从那时候那姑娘
唱着“我们的船驶离哈瓦那时”送别我们
离别的思念
就一直像二月的太阳发出苍白的光焰
秋夕小景
きばんだ草原が暮れかける頃に
天がパツと明るむ一時がある
町外れのビリヤードの冴えた球の音が
田圃を越してこの窓ではねかへる
子供らのざはめきとコスモスの落花
風はもう寒く、人影はくろい
杉林はもやになつた
風呂屋の灯も明るく邊り一ぱいの野菊の花だ
わづかに残つた薄光の中
秋の中で秋刀魚の匂ひなぞ胸をとりまく
秋夕小景
当枯黄的草原开始日暮
天空曾一度豁然放明
郊外的台球发出冷澈的响声
越过田圃,撞击着这扇窗棂
孩子们的喧嚣和波斯菊的落英
人影黢黑,秋风已冷
杉树林早就被雾霭笼罩
周围的野菊花流泻着澡堂明亮的灯影
夕照已所剩无几
秋日里,秋刀鱼的香味盈满了心底
椿(構圖)
石が吸つた血の赤さ
不義御發度の片制敗
お殿様の刀のさびは
即ち形態美の不思議さである
腰元、楓は今眼にわびしい
花が咲いてゐる
山茶花(构图)
石头吮吸的鲜血一片赤红
那是对不义之举的严正制裁
老爷那把大刀上的铁锈
散发着不可思议的形态美感
而在腰间,枫树此刻看起来凄寂无限
啊,花儿已开绽
女髪結ひ(構圖)
そいでね、あたいおこつちやつたの
だつて、いくら何でもね
あたいにばかりかせがしてさ
自分は自分でいゝ氣なもんさ
おまけにね、この頃貸本屋さんとこの美代ちやんに
ほれてるんだつてさ
ちやんちやらをかくして
(女髪結は泣いてるらしい)
お蔵の渡しのそばのお風呂屋のお風呂ん中
ペンキで描いた不二の山はとぼけてる
言葉だけの女はきつとむしやむしやして
羽織も引つかけずにお湯ぶうへきたんだらう
くりからもんもんも坊主頭もしんみりしてる
お蔵の渡しのそばのお風呂屋のお風呂ん中。
理发女(构图)
所以啊,我真的是怒火冲天
要知道,他千方百计
尽让我出来做工挣钱
而他自己倒是得意万分,风光无限
再说,前一阵还迷上了
租书铺的那个美代姑娘
说来实在是滑稽荒唐
(理发女似乎在哭)
在御藏桥渡口旁的澡堂池子里
油漆画成的不二山模糊而迷茫
这个只闻其声的女人肯定是心烦意乱
没有穿和服外褂,就跑来了澡堂
纹身男和秃头男在隔壁静听着,悄然无语
在御藏桥渡口旁的澡堂池子里
退屈な秋夜
くらくなつた世界に小さい灯だけほのゆらぐ
風鈴の音で風があるなあと思ふことはわびしい
手紙は三枚だけ書けばもうイヤになるし
一體全體何處の誰宛に出すべきかも考へてない
ペンををくと腕組みをするこの頃のくせ
阿佐ヶ谷三四八番地は夜になると一層靜になる
蚊でもぶんぶんうなれば私も少しは浮んで來るだらう
うす暗い氣もちの中で机を抱へてることも
重量のあるもんだと云へば云ひ得る
小さい灯をにらんで私はもつと細かになりたいし
何も案じたくはない
无聊的秋夜
日暮的世界里,只有一盏小灯在依稀摇曳
风铃声提醒我起风了,顿感凄切
信只写到第三页,就已经厌倦
甚至不曾想,该写给什么地方的什么人
一搁下笔就抱紧双臂,这已成了近来的习性
一到夜里,阿佐谷三四八号地就变得更加寂静
就算是蚊子出来嗡嗡鸣叫,我也会好受一点吧
在有些低落的心境中抱住桌子
说它很沉吧,倒也的确如此
瞅着小小的灯盏,我希望变得更加微小
什么也不愿惦记
南から來たお客の詩
おやめ!花二鳳!
南からきたお客はね
泣き言なんか大きらひだよ!
ごらん!花二鳳!
このどすぐろい顔が月を見る
お前の眼には明日の雨が降る
泣きやんだか?花二鳳!
汐くさいおいらの心にしみるのは
お前の髪かざり、晩香玉!
月の光りがまぶしけりや、まぶしいほどに
この丸窓の芭蕉の葉がくれで
お前と並んで天そらを見る
おいらの死んだ母と
おいらをすてた故里の、故里の
あの船つき場の水の流れをきく
だが、それは夢だ!花二鳳!
お前のいゝ見さんはね
今夜こそおこらない、今夜こそいゝ心!
さあ、立ち上つてうたつた、うたつた「十送郎」
お前のまぶしい黒瞳の中で
おいらはきかう!あのあどけない「十送郎」
『一更里來跳粉墙手把那的欄桿吓
望々裏張美貌佳人紅燈坐
十指那的尖尖吓繍繍鴛鴦』
南方来客的诗
花二凤!快停止哭泣!
南方来的客人
最讨厌哭哭啼啼!
瞧!花二凤!
你黢黑的脸仰望着月亮
眼睛里下着明日的雨滴
是否已停止了哭泣?花二凤!
你的发饰和晚香玉
已渗入我那带着潮腥的心底!
月光越是耀眼
就越该躲在这圆窗前的芭蕉叶丛里
和你并肩眺望天际
还要和我那过世的母亲一起
倾听那抛弃了我的
故乡码头上的水流声
但那不过是空梦一场!花二凤!
你的好阿哥
今夜才不会生气,反倒是心旷神怡!
哇,你站起来唱道,唱着那首“十送郎”
从你眩目的黑眼珠里
就让我来听吧!听那天真无邪的“十送郎”
“一更里来跳粉墙手把那的栏杆吓
望望里张美貌佳人红灯坐
十指那的尖尖吓绣绣鸳鸯”
鷗
——水夫長の言葉——おゝ、汐の匂ひがばかにさばさばするな
鷗やつらマストにとろとろしようと
わしにはようく見えるんだ
ね、局長、あんな白い平和な鳥
夜になるまで本船をおつかけて來た鳥
あれは對馬の鷗
お天道様が沈んでしまへば
ぐつすりとマストにまどろんでゐやがる
實に可愛い生物
あれで仲々戀もりんきも知りつくした鷗達やつら
明日の朝、日が出りや
本船を離れてばたばた又ついてくる
鯨のやうな對馬生れの鷗
ね、ごらんなすい
少しうそ寒い西に風しが吹いてくりや
鷗やつらはがつしりとかたまつちまいませう
あれで明日の朝まで
とろとろとよくまあマストにしがみついてゝ
なかなか氣樂さうな鳥
詩的な鳥
わしらが大連の港へつけば大連の空をさまよひ
でかい露助の家で
若者たちがちんちんかもかもをやつてるときも
鷗やつらはばたばたと
一晩中あの煙の空、透明な空を飛びまはり
しまひには羽根や眼がよわつて
旅先でもろくも墜落惨死する
實に可愛さうな鳥でございますよ
まるで死にゝ行くやうなあの姿——
ね、局長、御らんなすい
本當に可愛いあの姿
この星天ぞらに輝く哀れなものゝ生命いのち
さあ、あまりさばさばした汐風にぬりねい前に
白鷹でもつき合ひませう
いまに期月も出て
浪の上の二十五年がぱつと明るくなるし
「佐渡節」も咽喉をとんろりさせるし
鷗やつらの白い姿を無心に眺め乍ら
夜の支那海の宴さかもりにしませうね
海鸥
——水手长的话——哇,潮水的味道出奇的干爽
就算海鸥在桅杆上打盹
我也可以一目了然
喂,局长,那么雪白的和平鸟
入夜前,就一直紧追着本船
它们是对马日本地名,位于日本长崎县。的海鸥
一旦日神沉陷
就在桅杆上酣眠
这真是一帮可爱的生物
它们精通恋爱,并善于随机应变
明天早晨,一旦日出
这些像鲸鱼一样出生于对马的海鸥
就会飞离本船,不久又跟踪而来
喂,请看啊
只要吹来一点冷风
海鸥就会密密匝匝聚集在一起
就那样直到明天清晨
迷迷糊糊地紧抱着桅杆
真是一群惬意的鸟儿
充满诗意的鸟儿
只要我们一到大连,它们就在大连上空来回盘旋
当在俄国佬硕大的豪宅里
年轻人们玩着单腿跳的游戏时
海鸥也拍打着双翅
整夜都盘桓在那烟雾缭绕的天际、透明的天际
到最后,羽毛和视力逐渐衰退
在旅途中脆弱地坠落而死
说来这鸟儿也真是可怜
那模样就像是奔赴死亡之地——
喂,局长,你看
那模样真是可爱
这闪烁在星空中的可悲动物的生命
喂,趁着还没有被痛快的海风彻底濡湿
就和白色的雄鹰尽情嬉戏吧
不久月亮也要升起
浪尖上的二十五年会霍然闪光
而“佐渡小调”也会滋润我的喉咙
凝神眺望着海鸥白色的身影
就权当作是在享受中国海的夜宴吧
冬
夕方の町のすがたは凍てついてしまつた——
空のさむざむした色を見ろ
さくらの枯枝を見ろ
水の白々とした流れを見ろ
それでなくとも肩先きをたゝいてとほるものに
冬が來ましたぜといはれたではないか?
冬が來ました
冬が來ました
さつき妙な腰つきで
オレのそばを過ぎ去つた空の汽笛は
ぐつとカーヴして
あの赤煉火の塀をとび越してしまつたのだ
工場がへりの女工達の赤いほゝをつねつて
あのか、ら、た、ち、の茂みの中へもぐりこんでしまつたのだ
町を行くオレのすがたがしよんぼりとしてゐればゐるほどに
あのいたづらものめは
大きな聲で冬のしらせをどなるのだ
裏町のとある小鳥屋の二階で
きれいな娘が白い山茶花の一枝を眺めてかと思ふと
あいつはオレの果報をうらやむのではないかしら
あの針だらけのか、ら、た、ち、の茂みの中から
のつぺらぼうの半身をつき出して
いまにさむい風になるぞ
オレの耳一ぱいのどら聲でどなるのではないかしら
やがてあの雑木林の上に利鎌のやうな三日の月が出るとあいつも急に靜まり
どこからともない曲馬團サーカスの朗らかな音樂がきこえ
この片町の凍てついた風景も
ぐつとやはらかい氣分を見せるのではないかしら
さもなければ強い空つ風の夜となつて
どこかでは一つの小さい火鉢がとりまかれ
北の國の雪女郎の話や
透明な氷すべりの話に
りんごのやうな子供たちがよろこぶのではないかしら
木も電信柱も石も橋も
みんな赤い夕日にてらされて
おい、若いの、風邪ひくな
こゝは貧乏人の町だよ
あまりいゝ氣持ちで歩くとすべるぞ
ま向ひのくろぐろとした煙突のやつめが吠えるではないか
いゝ氣になつて巴やきを賣る店先きの雀までさへづらせ
このオレの下駄の音を透明にしてしまつたではないか
家々のきいろつぽい灯に
おゝその時だ!
オレはふるさとの母と妹との姿を
まつ白いみちばたで思ひ出したのだ
凍てついた空の空色と
海の海鳴りに
おい、若いの、早くかへんねえ
風邪引いたらいかんぞ
あののつぺら坊主の汽笛と
くろぐろとした煙突がまた大きな聲でどなるのではないか
おい、ほんとだよ
ふつとうしろをふりむくと
朗らかな版畫のやうな風景が
ほうとほんのり色でオレの背後をいろどつて
木も石も家も何もかも
たつた一時やはらかい氣もちでくつろいでゐるではないか
冬が來ました
冬が來ました
オレはあいつらの聲を耳にしながら
思ひ切り早足で歩いたのも
あいつらの質朴な親切な心が身にしみたからだよ
だからくろいマントを鳥のやうにまとひ
家へかへつて暖かいけ、ん、ち、ん、を食べやうと
オレはうれしい氣もちですべり出したんだよ
オーイのつぺら坊主と煙突君さやうなら!
オレは透明な下駄の音に追つかけられながら
大いそぎでうちへすべるのも
黄いろい町の灯ともしびとお前たちのありがたい心もちだよ
オーイのつぺら坊主と煙突君さやうなら!
冬
黄昏的街景已经封冻——
请看这空中冷冷的天色吧
还有樱花树上的枯枝
以及白花花的流水
即便不这样,那些拍打着你的肩膀,拂袖而去的东西
不是也宣告着冬天的来临吗?
冬天来了
冬天来了
刚才用奇妙的姿势
从我身边溜过的汽笛
突然拐个弯
飞越了那道红砖砌就的墙垣
拧了一把下班归来的女工们的面颊
就倏然钻进了茂密的枸橘林间
我走在街上的身影越是落魄
那个恶作剧的家伙
就越是大声地通报着冬天的音讯
一想到背街的某家鸟禽店的二楼上
有个俏姑娘正凝视着一支白色的山茶花
或许那家伙
会憎恨我的好运
以至于从满是荆棘的枸橘林中
探出干瘪的上半身
当即变成凛冽的寒风
用破锣嗓子朝我整个耳朵大声狂鸣
不久,当镰刀般的月牙升起在灌木丛的上空,那家伙也蓦地变得安静
不知从哪儿传来了马戏团快活的音乐
这街道上封冻的风景
也会陡然尽显柔和的气氛
要不,就化作干风肆虐的夜晚
人们在某个地方围着小小的火盆
讲述着北国雪女郎的故事
还有在透明冰面上滑冰的趣闻
让苹果般的孩子们好不兴奋
树木、电杆、石头、桥梁
无不沐浴着红色的夕阳
喂,年青人,千万别感冒
这儿可是穷人的街道
走得忘乎所以,肯定会摔跤!
对面那像烟囱般黑黢黢的家伙不是会狂吠吗?
甚至让烧烤店前的麻雀也跟着起哄
将我的木屐声变得晶莹透明
而家家户户也点上了昏黄的夜灯
啊,就在此时!
我在雪白的街道旁想起了
远在故乡的妹妹和母亲
在天空封冻的蓝色
和大海的鸣叫中
那扁平的汽笛
和黑黢黢的烟囱又在大声地训斥:
年青人,还不赶快回去
害上感冒可就坏了
喂,这可不是说来吓唬你的!
我蓦然回首一看
那如版画般明丽的风景
就轻描淡写地点缀着我的背影
树木、石头、房屋和一切的一切
不是都在轻松地小憩吗?
冬天来了
冬天来了
我之所以一边听着他们的话语
一边尽情地快步向前
也是因为受到了他们那纯朴善良之心的感染
所以就像乌鸦般披上黑色的斗篷
回家去吃热腾腾的松肉吧
是的,我已怀着快乐的心情开始滑行
喂,再见了——扁平的汽笛和烟囱小弟!
我被脚下透明的木屐声追逐着
飞快地滑向家里
这也多亏了黄色的街灯和你们的好心
喂,再见了——扁平的汽笛和烟囱小弟!
喫茶店金水
——天津回想詩——あの日本租界の富貴胡同近くで
フネフネと云はれた夏の夜は
ようくアイスクリームやソーダ水をすゝつたものです
白いゲートルの可愛らしい中學生姿で
三人の少年が
晩香玉の匂ふ初夏の夜更けに
ぽつかりと
ぽつかりとあの喫茶店金水におちつくのは
冷んやりした夏の夜露のおりるころ
時計がいつも寝ぼけてうつ十二時近くです
しかも夜の電影と白河河岸
綠のフランス花園を歩き疲れたものにとつては
あの金水のアイスクリーム
白いプリンソーダの味のよさは
實に心にしみるくらゐです
あゝ、あの裏町·富貴胡同近くで
フネフネとさはがれた去年の夏の夜は
ようくアイスクリームやソーダ水をすゝつたものです
あの涼しい喫茶店金水の灯のもとで
美しくたれ下る糸硝子を眺め乍ら
ひるまの暑さをも打忘れて
三人の少年がこゝろよく語つた夜更けの快適さは
いまの自分にとつても早一昔の夢のやうです
あの朝鮮の美しい女が澤山ゐるといふ富貴胡同近くで
アメリカの無頼漢兵士の一人歩きを不思議に思つたり
フネフネとよぶ車夫の言葉が
どうしてもわからなかつた去年の夏は
いまの僕にとつて
ほんとになつかしい思ひ出の一つ
も早『すぎ去つた純真時代』と云はれてゐます。
“金水”咖啡馆
——天津回想诗——在日本租界的富贵胡同旁边
在有人“叽哩呱啦”吆喝着的夏日夜晚
我们时常品味着冰激淋啜饮着苏打水
三个中学生模样的可爱少年
裹着白色的绑腿
在漂着晚香玉清香的初夏夜晚
“嚯”的一下子
一下子来到“金水”咖啡馆
这时夜已凉,露已降
钟声懒洋洋地敲过了十二响
他们看完夜场电影
从白河岸边溜达到法国花园,一脸疲倦
对于他们而言
“金水”咖啡馆的冰激淋
还有那白色布丁苏打水的美味
是多么沁人心肺!
啊在那条叫做富贵胡同的小巷旁边
在去年那个有人“叽哩呱啦”吆喝着的夏日夜晚
他们时常品味着冰激淋啜饮着苏打水
就着咖啡馆那凉幽幽的灯光
三个少年忘却了白天的热浪
一边凝望眼前垂下的金丝玻璃
一边畅聊,直到天亮
这样的场景现在想来,好似已成梦幻一场!
在那据说有很多朝鲜靓女的富贵胡同旁
美国无赖大兵的独行背影令人颇费思量
车夫们“叽里呱啦”地招揽着客人
他们的话儿我却听不懂,一脸迷茫
啊去年的夏天对于现在的我
实在是美好的回忆,令人难忘
正所谓“逝去的纯真时光”!
教會堂のある丘
——青島回想詩——あの丘に
南蠻らしくも教會堂が並んでゐた
長崎の和蘭氣分の如くに綠の瓦が輝いてゐた
夕方なぞ市街から外出のかへりに
あのだんだら坂をすたこらこら上る時
私の目には
いつもやさしいオルガンの曲がひゞいてた
あの海の見ゆる丘一ぱいの
古典的な建物のそれぞれから
エルサレムの樂の音の如く
夕映の天そらにオルガンの音がひゞいてた
そして××禮拜堂、△△天主堂、明徳學校、聖功女學校
長い石塀をめぐらして
綠の樹蔭をもつたいろいろな洋館からは
ようく中國人の子弟の出入する光景が
實にたのしく且幸福さうに見えた
それぞれ宗教のよろこびを感じ乍ら
あの石だゝみの一本道を辿る光景に
貧しい自分だなあと砂利をけつたりしたこともあつた
あの聖地帯の靜かさに
白い尼さんの行く姿なぞも自分は見た
信仰に身をさゝげた若い女の姿は
ぐつと自分に神らしさを感じさせ
尊い僧正の夕やみの中に消ゆる姿なぞも
うらさびしい夕風のやうなものだつた
あゝあの時代自分は涙ぐましい風景を思ひ浮べてゐた
少しさびしい生活のために
若い心をすつかりしをらせて
あの丘のオルガンの音を
ひとり涙ぐましくもきいてゐた。
有教堂的山丘
——青岛回想诗——在某个山丘上
耸立着一座教堂,它很有点南蛮的风尚
充满了长崎那种荷兰风情,绿色的屋瓦熠熠发光
傍晚,从市街外出归来
急匆匆地爬上那道懒洋洋的山坡时
在我的眼里
总是会回旋着温柔的风琴曲
从看得见大海的山丘上
密布的古典建筑里
风琴声响彻在夕阳映照的天际
就像耶路撒冷的神圣音乐
在××礼拜堂、△△天主堂、明德学校、圣功女学校
那围着长长石墙的
绿树掩映的西式建筑里
常常可以看见中国学生进出的光景
看起来是那么快乐而幸福
一边感受着宗教的喜悦
一边沿着石砌的小道漫然前行
有时会因为觉得自己很寒碜,而踢着沙砾来撒气
在那神圣地带的宁谧中
我还看见白色的尼姑走路的身影
那种献身于信仰的年轻女人的模样
也顿时让我倍感神圣
而高贵的僧侣消失在黑暗中的影子
就恍如有点凄切的晚风
啊,心中浮现出了让那个时代的我泪眼潸然的风景
因有些寂寞的生活
我带着黯然的心灵
泪流满面地独自倾听着
来自那山丘上的风琴声
雪夜
ねえ妹よ
僕が歸省してから
ばかに暖い空氣となつて
心よい新年もまぢかに迫つてゐるではないか
かうして夜など母上はあ、み、も、の、をし
お前がピアノでも彈いて
僕一人ぢつと詩作する心地よさは
たうてい青島の學校では味はれないしんみりした心で
僕はかうした夜と
どの位まちにまつてゐたのであらう
ねえ妹よ
たつた一人の黄寜馨よ
父なくて
親子三人しみじみと一つの部屋にあつまれば
何の涙なしに
この兄の眼が寂しく輝くか
あゝかうして暖いストーヴをかこんで
一夜降雪の音をきけば
何の涙なしに
回顧の想を抱くといふか
雪夜
妹妹啊
自从我返乡后
空气就一下子变得格外温暖
而快乐的新年不也就在眼前?
就这样,夜里——母亲大人编织着毛衣
你弹着钢琴
而我则独自醉心于写诗
这是在青岛的学校里难以体会到的惬意
我等待这样的夜晚已有多时?
啊,妹妹
独一无二的黄宁馨
没有父亲
只有母子三人静聚在同一屋内
没有任何眼泪
哥哥我,眼里是否闪烁着凄切的光辉?
啊,就这样簇拥着温暖的火炉
静听着整夜下雪的声音
没有任何眼泪
或许我是陷入了对往事的回味?
朝のよろこび
しみじみした心の下で
今朝信號所の旗がひらひらしてる
荒涼な青空の下で
朝風にひらめく入港の赤旗よ
五日に一ぺんの便船よ
日本からの懐かしいたよりをどつさりつんで
アカシヤの疎林の間をちらちらしてる
あゝ昨日までしけてた海が
今朝すつかりおだやかになつて
僕たちの書見の窓に
待ちに待つた便船が現はれる
長い間待つてた戀人のやうに
僕のこの喜びは爆發しさうだ
このよろこびに
今日一日中おちついてゐられさうもないやうだ
清晨的喜悦
在宁静的心灵下
今早,信号所的旗帜在轻轻飞扬
在荒凉的晴空下
进港的红旗在迎风飘荡
五天一班的邮船啊
满载着来自日本的久违音讯
在稀疏的洋槐林间时现时隐
啊,昨天都还波涛汹涌的海面
今早已经浪静风平
在我们读书的窗前
终于出现了期盼已久的邮船
就如同等待了太久的恋人
我的喜悦几乎要引爆上天
这喜悦
似乎要搅得我整天都不得宁安
朝の展望
——中川一政氏にさゝぐ見給へ
砲臺の上の空がかつきり晴れて
この日曜の朝のいのりの鐘に
幾人も幾人も
ミツシヨンスクールの生徒が列をなして坂を上る
冬のはじめとは云ひ乍ら
胡藤の疎林に朝鮮烏が飛びまはり
町の保安隊が一人二人
ねぎと徳利と包とをぶらさげて
丸い姿で胡藤の梢にかくれたり見えたり
あゝ朝は實に氣もちがいゝ
窓をふいてると
暖い風が入りこみ部屋をぐるぐるまはる
そしてあゝ
日曜の朝はいつにない陽の流れ
いつにない部屋の靜かさ
この二階の室で海から山から
僕は伊太利のやうなこの町の姿をも見ようとするのだ
寄宿舎で一番見晴しのよいこの部屋からは
はげ山の督辦公館も見え
その上にまた
信號所のがつしりした建物が見えて
このあさみどりの空に
數葉の旗がはたはたとなびき
ゆふべ一晩沖に吠えてゐた帆前船が
しづしづと
しづしづと港へ入るではないか
あゝ黒い保安隊の兵舎からは
すてきにゆるやかなラツパの音
海面一帯朝の光りに輝いて
軍艦海坼の黒煙りよ
それからまた遠い向ふ岸の白壁の民家よ
窓をふきながら
春のやうな氣分もて
こゝろしづかにも
日曜の朝の展望をするのだ
清晨的展望
——献给中川一政先生瞧
炮台上的天空晴朗而清澄
随着这礼拜日清晨的祷告钟声
一群群,一群群
教会学校的学生们排着队伍沿坡攀登
虽说是冬日的伊始
可喜鹊却在稀疏的洋槐林中四处飞旋
有一两个镇上的保安队员
故意提拎着青葱、酒壶和包袱
蜷缩着身体,在洋槐林的树梢间忽隐忽现
啊,清晨的确让人心情怡然
一旦擦拭窗户
暖暖的风便鱼贯而入,在房间里来回盘桓
而且,啊——
礼拜日的清晨流泻着不同于平日的光线
还有房间里不同于平日的静闲
在这二楼上的房间远眺大海,远眺山峦
我还要尽览这宛如意大利一般的街头景观
从这宿舍里风景最佳的房间
能望见秃山上的督办公馆
还有耸立在它上面的
信号所的坚实建筑
在这浅绿色的天空上
几杆旗帜呼啦啦地随风招展
在海面上吠叫了一夜的帆船
不是正静静地
静静地驶入了港湾?
啊,从黑黢黢的保安队宿舍
传来了美妙而悠闲的号角
海面在清晨的光影中烁烁闪闪
啊,海圻号军舰冒着黑烟
遥远的对岸耸立着白墙的民房
一边擦拭着窗棂
一边怀着春天的萌动
平心静气地
展望礼拜日的清晨
フランスの匂ひ
クリーム色の船室キヤビンだ
十八世紀の帆前船の中だ
ほうれ、片よつた船の丸窓から
水平線がかつきり見えるだらう
夜は月が出て波がきらきら輝やく美しさ
ほうれ
「上げ舵」と水夫長の指揮する聲がのんびりと傾くだらう
ほうれ、ねえ
が、マダムよ、そんなに耳をすまさなくてもいゝ
(自然の聲はすばらしい)
さあもう一ぱい浪のやうにビールの中へ笑をそゝいでくれい
船長はタバコものまないつゝましい大柄な男
事務長は廣東生れの赤ネクタイ
おれか?
おれは濠洲がへりの眞珠採りさ
マダムよ、そんなに不思議な顔をしなくてもいゝ
おれか?
おれはお前の瞳めのやうな真珠をとる働き手さ
久しぶりで國へかへる女しらずの初心うぶな男さ
氣に入らうとどつこい手に入らぬ若者さ
マダムは知るや知らずか姿を消した——
風が潮の匂ひをぷんぷんさせるので
さあ、ビール氣分でこのたくましい胸毛を見せ
カンガルーのなき聲でもやつて見せようかな?
(鉢の木)
法兰西的气味
这是乳黄色的船舱
是在十八世纪的帆船里面
瞧,从倾斜的圆形舷窗
可以清晰地看见水平线
夜晚,月色皎洁,波光粼粼
听,“上转舵”——
水手长的指令带着悠闲的回音
喂,你听啊,夫人
不过,其实你不必那么竖起耳朵
(自然的声音是美妙的)
不妨再来一杯吧,就像波浪一样把笑声注满啤酒
节俭的船长是一位烟也不抽的大个子男人
祖籍广东的事务长系着一条红色的领带
至于我
则是从澳洲回来的珍珠开采人
夫人啊,你不必做出那种不可思议的表情
你是问我吗?
我的职业就是开采像你眼仁般的珍珠
是一个久未回国,对女人一无所知的天真男人
一个喜欢什么也休想得手的年轻人
不知不觉间,夫人已无影无踪——
因为海风释放出浓烈的潮香
所以,就趁着酒兴给你们秀秀这雄壮的胸毛
装一声袋鼠的啼叫吧
(盆栽之树)
白痴
白痴は今日も空を眺めてた
白痴はこの青やかな雨上りの幸福を知つてるらしい
この夏の青葉をすかした朝風に
豐満な二つの乳房をあらはしては
駄菓子やの前でぢつと空を見る
そのほつそりした眼をほつそりとし
そのアフリカ象の皮膚の色も氣にかけず
半裸體のまゝで空を見る
青やかな青やかな空を見る
あゝ白痴、彼女は十八九
たとへ人生のよろこびを知らない乍らも
駄菓子やの前で
青い巴杏子ぼたんきようをかぢり乍ら
大きな大きな自然に眺めいる
まはりの兒らすべて赤いりんごにたとへ
彼の女、今日も街上の天文學者
白痴がなしくも
青やかな青やかな空を見る。
白痴
白痴今天也在望着天空
白痴好像知道这放晴后湛蓝的幸福
在吹过这夏季绿叶的晨风中
她露出两只丰满的乳峰
面对一堆点心,她凝望着天空
眯缝着那双细长的眼睛
对非洲象一般的肤色也无动于衷
只是半裸着身体,仰望着天空
啊,白痴的她年方十有八九
就算不知道人生的愉悦
也还是端坐在一堆点心前
一边嚼着青色的布拉斯李
一边出神地看着广袤的自然
把周围的孩子们全部看作红色的苹果
她,今天依旧是街头的天文学家
这白痴煞是悲哀地
呆望着湛蓝的天空。
天津路の夜景
——青島回想詩——ゆがんだ看板や
涼しいビスヰ屋なぞずらりと並べ
あの古びた獨逸町の
夕やみをくゞつて僕がしたしんだ天津路
あゝ天津路、天津路
いやにくらい銭舗の銅子兒の音や
ふとつた豚女や
ぽくりぽくり高底靴をはいた魚屋や青物屋の若者や
どこかのつぺりした官吏の少爺や
大きな布團を脊にした田舎出の苦力や
あゝ私は本當にあのころ天津路をむやみに歩いた
あのバタくさい青島の町で
しみじみと中國の生活にしたしむために
燕の飛ぶ夕やみをくゞつて
ゆがんだ金銀の看板をめでたり
清爽な晩香玉の香りを鼻にしたり
胡藤の花咲く山の中の
きうくつな中學寄宿舎をぬけ出して
さゝやかな料亭の一君子となつて
初夏の夕ぐれを愛した
一ぱいの蘭茶に
あの東洋的な天津路の夕景を
ぐつと心の中にのみいれて
自分は中國人だといふことを無上の光栄に思ふた
天津路的夜景
——青岛回想诗——在那古旧的德国租界
挤满了歪斜的招牌
和清凉的翡翠商铺
我穿过它昏暗的暮色,赶往熟悉的天津路
啊,天津路,天津路
钱庄那阴郁得可怕的铜钱声
肥胖的女人
穿着筒靴的鱼铺子和蔬菜店的年轻伙计
不知是哪儿的面无表情的官少爷
还有背着大被褥、从乡下来打工的苦力们
啊,那时的我真是马不停蹄地走在天津路上
在青岛那散发着奶酪臭的街道上
为了熟悉中国的生活
我在燕子盘桓的暮色中穿梭
观赏着歪斜的金银招牌
闻着晚香玉清爽的芳香
我从山中开放着洋槐花的
令人窒息的中学宿舍里悄悄溜出
摇身变成小小饭庄里的一介君子
深爱着这初夏的黄昏
我品味着一杯兰茶
把充满东洋风情的天津路夕景
一口气啜饮进心中
我为自己是一个中国人感到无上的光荣
诗集《瑞枝》后记
时常琢磨着,该整理一下自己的诗歌,但却一直没有这样的契机。这次终于下定决心,制造了这样的机会。也因此而劳烦了诸多的友人。
本人于1930年曾出版过百部家藏版的诗集《景星》。但却是与本诗集无法相比的小小诗册。
本诗集没有收录在1931年后的南京所创作的作品。
本诗集的名字借用自《万叶集》。
而且,之所以收录过去的作品,乃是源于众多友人的希冀。这样说来,倒也觉得可以从本诗集中依稀看到一个人的过去。
我希望本书能够捧在各种各样的读者手中。
为了向对我一无所知而阅读本诗集的人聊表敬意,决定在此添附鄙人的照片和小传。
黄瀛
一九三三年五月于南京郊外